■目次へ ■本文へ

 

せんだいメディアテーク
980-0821
仙台市青葉区春日町2-1
電話 022-713-3171
ファックス 022-713-4482
office@smt.city.sendai.jp
http://www.smt.jp/

 

写真

「仙台市民図書館は、せんだいメディアテークから分離独立すべきである」という論題でディベートを行った。私が宮城大学で開講している2年生対象の公益施設設計事例という科目でのことである。この科目では、公益施設として近代社会に生じた様々なビルディングタイプ、すなわち「施設=制度化された建築」について議論している。こうした施設には、学校、病院、監獄、博物館、駅、工場などがあるが、もちろん図書館も典型的なビルディングタイプのひとつである。審判団の判定は18対10で肯定側の勝利であった。

同じディベート形式で期末レポートも提出させた。ひとりで肯定と否定それぞれの立場で立論し、その上で自身の見解を述べるというものだ。他の論題も用意したのだが、60%以上の学生がsmtの論題を選択した。それだけ、今日のビルディングタイプを論じるにsmtは格好の素材だということだろう。

分離否定側は、図書館来館者が西公園時代の2.5倍に増大したこと、smt来館者の約69%が図書館利用者であること、『コンセプトブック』などを典拠にsmtは理念上「単なる施設の集合」ではないのであり、その中核にあたる図書館を分離することは、smtの理念そのものを否定することになること、などを論点にあげた。

対する分離肯定側の論点は、現状では「図書館」として中途半端(遠い、狭い、落ち着かない)であること、縦割り組織を超えたsmt内コラボレーションもかけ声どまりの実態であること、などがあり、さらには、「メディアの棚」たるsmtの空間構成であれば、たとえば3階を「ジュンク堂書店」に、7階を「TSUTAYA」にしたとしても支障なく運営可能なのではないか、という提案もあった。

これらの議論を踏まえての自身の見解においては、講義中のディベートとは異なり、分離否定論が多勢を占めた。実態によって立てば分離は可能かもしれないが、それではsmtの理念が失われてしまう、smtがsmtではなくなってしまう……というのである。

「アンダーコンストラクション」というsmtのコンセプトはとても率直だけれど、ちょっとずるいところがあり、理念と実態とのギャップを隠蔽してしまうことにもなりかねない。この論題は、そのギャップを問うものでもあった。今回のディベートでは形式上smtの理念そのものの是非は問うてはいないけれども、提出されたレポートには、実態とのギャップを認識したうえでなお、smtの理念への支持と期待が表明されていたのである。