7月5・6日に開催された「街を伝えるワークショップ」(インストラクター:光島貴之さん)を報告する展覧会を担当しました。どのような条件下にあってもわたしたちには共通する感覚があり、経験には互換性がある、ということをインスタレーションによって追体験していただくため、盲(もう)と晴眼(せいがん)という視覚に関するふたつの様相を光と闇の対比空間として構成しました。
街のほぼ正確な縮尺による建築模型と地図制作の目的地で採取した音を設置した暗室では、これまで街を俯瞰(ふかん)する経験がなかった盲の方は建物の高さや大きさの全体的な関係を触って想像して楽しみ、晴眼者は闇の中で一歩も動けなくなったり、模型の道を指で触りながら辿っていても途中で方向や距離感がわからなくなるなど、感覚の遮断と開放を交互に体験できたようです。暗幕の外を囲む明るい部屋には晴眼者が作った「街を伝えるための触覚地図(立体コピーと実材模型)」や街歩きの記録映像などを配置しました。特に晴眼者にとっては、暗室での経験を通過した後では、見なれた光ある世界への眼差しの変化に自ら気づくこともあったでしょう。
見える者と見えない者の世界の対比から差異を測るものではなく、この展覧会が互いに共有できる文化への気づきを仕掛ける装置となることを期待します。私自身は、FOMA(テレビ電話ができるNTTドコモ社の携帯電話サービス)による盲人の一人歩き遠隔支援の体験やワークショップでの意見交換、展示設営中に光島氏と体験した地震、などを通して、空間の知覚や方向認知について多くの示唆を得る機会となりました。