2023
03 02
メディアテーク開館
仙台市民図書館開館
スタッフより 2021年09月22日更新
山形国際ドキュメンタリー映画祭での上映のご案内と、当会の自己紹介を改めて
今年の2月27日(土)にせんだいメディアテークで上映したみやぎシネマクラドル製作のオムニバス映画『10年後のまなざし』が、山形国際ドキュメンタリー映画祭の震災特集「ともにある Cinema with Us」でオンライン上映されることになりました。上映は10月10日(日)17:00~の1回です。
■山形国際ドキュメンタリー映画祭公式サイト
https://www.yidff.jp/home.html
「地元宮城のみなさんとともに、震災から10年という時間を考えるための機会を作りたい」という目的のもと、村上浩康、山田徹、我妻和樹、海子揮一の会員有志4名で作った本作。今年の映画祭はコロナ禍のためオンラインでの開催になるようですが、再び上映の機会ができて嬉しいです。
なお、10月11日(月)20:00~は、震災特集の参加4作品の監督によるトークもあります。当会からは海子揮一が代表して登壇します。是非併せてご視聴ください!
※震災特集には当会会員の我妻和樹監督『千古里の空とマドレーヌ』、岩崎孝正監督『ふるさとに旅する』も出品されています。こちらも是非ご視聴ください。
『10年後のまなざし』
みやぎシネマクラドル製作/2021年/82分
①『冬歩き』(村上浩康監督)
岩手県大槌町の災害公営住宅に独り暮らす佐々木信巳さん(79歳)。彼は本作の監督・村上浩康の義理の父である。2020年の大晦日、信巳さんの日課である朝の散歩に同行し、被災から現在までの道のりを聞く。同時に変わりゆく町の様相を捉え、震災がもたらした様々な事象をデータとして提示し、大槌町の10年間を振り返る。個人の記憶と町の記録が冬の散歩の中に交錯する。
②『あいまいな喪失』(山田徹監督)
家族で印刷業を営んできた武政は、原発事故で帰れなくなった浪江町の自宅と避難生活で次第に老いていく認知症の母テツに深い喪失感を抱いていた。いっぽう武政一家に嫁いだ茂子は、原発事故やテツの老いと正面から向き合うことで自分の新しい人生を模索していた。現実を受け入れながら前に進もうとする茂子と、震災前の時間に引き戻される武政。家の解体とテツの介護を通じて、二人の家族像や原発事故の向き合い方の違いが顕になっていく。
③『微力は無力ではない~ある災害ボランティアの記録~』(我妻和樹監督)
2014年11月、ある災害ボランティアの男性が亡くなった。東日本大震災時、居ても立っても居られない思いから南三陸町に入り、人生の最後の3年半を東北の復興のお手伝いに捧げた彼は、死後ゆかりの人びとの手によって南三陸の海に散骨された。本作では、「微力は無力ではない」と自問自答しながら活動していた彼の2012年時の映像、2018年の散骨時の映像、そして現在の南三陸町の風景をつなぎ合わせることで、どのような人と人の交わりが町の復興を支えてきたのかを改めて振り返り、被災地のために心を尽くしたたくさんの人の思いについて考えてみたい。
④『海と石灰』(海子揮一監督)
震災から1年を迎えようとする2012年2月の女川。人びとが集うための仮設カフェを改装する現場で、海水を使った特別な塗料「灯台しっくい」をみんなで壁に塗るワークショップが開かれた。震災前の女川でもカフェの内装に施した塗装職人がその復元に駆けつけた。彼とコーディネーター役の美術家を中心に生きる術としてのモノづくりを語り合い、未来を拓くための場作りに参加した「生き残った人びと」との交流と声の記録である。
いまは仮設カフェはすでにない。しかし人は創造という手触りを頼りに未来を拓いてきた。ゆえにこの映像は過ぎ去った記憶としてだけでなく、またいつかくる未来の光景かもしれない。
<みやぎシネマクラドルについて>
■概要
みやぎシネマクラドルは、主に宮城県内で活動する映像の作り手と、地元の作り手の活動に関心のある市民が共同でネットワークを広げていくためのプロジェクトです。せんだいメディアテークを拠点に2015年4月に始まりました。
■活動内容
当会に所属する作り手たちは普段はそれぞれに活動していますが、コミュニケーションツールや交流会を通して親睦を深めるほか、年に数回、せんだいメディアテークの事業「メディアスタディーズ」に参加し、「映像サロン」というイベントを不定期で開催しています。
「映像サロン」の主な内容としては、①「あるテーマについて、会員作品の上映を通して参加者が意見を交わし、考えを深めるもの」と、②「会員の制作途上の作品について参加者が忌憚の無い意見を出し合い、制作者に還元するもの」と2種類あります。映像を通して参加者が対話し、作り手同士高め合うのが映像サロンの目的です。
■立ち上げの経緯と目的
当会の立ち上げの背景には、地元で志高く映画を制作している作り手が、お互いの存在を知り、切磋琢磨するための環境を宮城に作ることができないかという思いがありました。
立ち上げ以来のメンバーには、ドキュメンタリーを中心に、劇場公開や国際映画祭での受賞の経験のある映画監督、テレビのベテランディレクターなど、映像の世界で活躍する作り手たちが参加しています。活動を続ける中で、アニメーション作家や作曲家など、メンバーも多彩になっていきました。
当会では、そうして志高く活動する作り手たちと、その志や活動を理解し、応援してくれる市民が交流しながら、映像を通して社会との関わり方や表現のあり方や人の生き方について考えるための場を作ったり、「映画を作りたいけどどうしていいか分からない」「映画を作っているけど作り手同士の交流がない」「せっかく映画を作ったけど人に観てもらう機会が無い」といった悩みを抱える人たちが気軽に情報交換したりするための場を作っています。
「cradle」(クレイドル)は邦訳すると「ゆりかご」という意味になります。このプロジェクトを通して地元の作り手の活動を広く一般市民に伝えつつ、同時に対話や交流や支え合いを通して次世代の作り手や宮城の豊かな映像文化を育むことに貢献したい。これが私たちみやぎシネマクラドルの目指すところです。
■これまでの活動(詳しくは過去のブログ記事をご参照ください)
・2015年6月13日(土)第1回映像サロン「私にとってのドキュメンタリー」
・2015年9月9日(水)第2回映像サロン「"日常"にドキュメンタリーはどう挑むか?」
・※同日に山田徹監督新作鑑賞会&意見交換会を開催
・2015年12月6日(日)第3回映像サロン「繋がりを見つける/輝きを捉える」
・2016年3月21日(月・祝)第4回映像サロン「イメージの地層~被災地での記録と表現をめぐって~」
・2016年4月14日(木)宍戸大裕監督新作鑑賞会&意見交換会
・2016年7月2日(土)第5回映像サロン「光を求めて~『波伝谷に生きる人びと』で描けなかった個人の物語~」
・2016年10月29日(土)第6回映像サロン「秋の芸術祭!!〜劇映画・ドキュメンタリー・アニメーション・科学映画夢の競演〜」
・2016年12月23日(金・祝)第7回映像サロン「まこっさんワールドへようこそ!~アニメと音楽のページェント~」
・2017年3月27日(月)第8回映像サロン「共同制作のあり方について~土地の人とともに暮らしの記憶を紡ぐこと~」
・2018年1月27日(土)佐藤真紀さんの映像作品についての意見交換会
・2018年9月1日(土)第9回映像サロン「映画祭という試みの場 〜観る発見、つくる喜び、広がる世界~」
・2019年2月16日(土)第10回映像サロン「自主制作映画への欲求~テレビから個人の表現へ~」
・2020年3月14日(土)第11回映像サロン「あらゆる場所に映画は宿る~出会いが導くドキュメンタリー映画論~」
・2020年8月29日(土)第12回映像サロン「私が映像を作る理由~その人を知りたいと思う気持ちが映像になる~」
・2020年11月21日(土)第13回映像サロン「人を<支える>ということ~今、震災1年後の映画から考える~」
・2021年2月27日(土)みやぎシネマクラドル震災10年特別上映企画「10年後のまなざし」
・2021年8月7日(土)第14回映像サロン「ドキュメンタリーは生きている~エンドマークのその先に~」
■みやぎシネマクラドルフェイスブック https://www.facebook.com/miyagi.cinemacradle
■問い合わせ先 m.cinemacradle@gmail.com